第19章 キミとの約束(後編)
………ごめんねエース。
「まァそんな落ち込むなよ、お前も直ぐに後を追わせてやるよ」
もう少しだけ我慢して……。
ユナの頭に狙いを定めたブーゲンは引き金を引く指に力を加えた…その刹那──。
「…‼︎ な、なんだ⁉︎」
突然突風が吹き荒れた。
「どーなってやがる⁉︎」
自然発生したとは到底思えない突風にブーゲンは腕を掲げながら目の前の少女を見据えた。
風はどうやら少女を中心に吹き荒れてる様だった…次第に激しくなる突風に建物全体が揺れ始め、窓硝子はパリンと音を立てて四散する。
あり得ない、あの女は確かに海楼石を付けている…能力は使えないはずだ…!
狼狽するブーゲンを余所にユナは立ち上がるとふらりと一歩、また一歩とブーゲンに近付いて行く──。
──そんなユナを見ていたエースも驚きを隠せないでいた…目の前に立つ少女は確かに自分と同じ手枷を付けている、なのに何故能力が使えるのか。
血が足りず遠のきそうになる意識の中必死に思考を巡らせるがエースの知る知識の中にはその答えは無い。
「くっ…来るな‼︎」
なんとも言えない恐怖を感じたブーゲンはユナに銃口を向けたまま叫ぶが風が強過ぎて狙いが定まらない。それでも両手で銃を握り引き金に手を掛けた。
「──っ、バケモノめ‼︎」
パンパンと銃を乱射するが弾は全てユナに届く前に風で弾かれてしまう。
『……気が済んだかしら? 次はこっちの番よ』
どこまでも冷たい声音に、言われたブーゲンは自分の足が竦んでいるのを感じていた。
目の前にいるのはまだ年端もいかない小娘だ、能力が使えても所詮は女…力では俺のが優ってる…!
奴の元にさえ辿り着ければ取り押さえる事なんて造作も無い、何を怯える必要がある…!
言い聞かせ自分を奮い立たせるがブーゲンの意に反して体は言うことを聞かない。ほんの数メートル先に手を伸ばせば届きそうな距離にユナがいるのに、まるで蛇に睨まれた蛙の様に動く事が出来なかった。