第18章 キミとの約束(前編)
現状を把握しようと必死に努めるが酷い頭痛と気持ち悪さとがユナの思考を鈍らせた…それに加え後ろ手に拘束された金属の”無機質な冷たさ”がユナの身体を蝕んでいく──。
「……がっ」
「ビリー!」
最後の一撃を食らったビリーはその場に倒れ込んだ、ピクリとも動かないところを見るとどうやら意識を失ったようだ。
「さァ次はてめェだ」
「…くそっ…!」
海楼石を付けているにも関わらずエースは強かった、初めの攻撃を除けばビリーの攻撃は全て躱されていたのだ。
これでも名の知れた賞金稼ぎ、腕に自信もあった。過去に何度か能力者もやっつけた…その時も今みたいに海楼石を使ったのだ、付けた者は皆弱くなり造作もなかった。
なのにこいつはどうだ、ホントに能力者か⁉︎ 動きが鈍くなるどころか速くなってる気さえする。
睨むエースの気迫に押されブーゲンは無意識に後退った…そして足下のモノに気付く。
「…! く、来るな! それ以上近付けばこいつの命はねェぞ‼︎」
「…っ!」
倉庫に射し込む夕陽がユナに突き付けられたナイフを反射させる。
『……ふっ、相変わらずのクズね』
「なに…⁉︎」
「…! ユナ気が付いたのか!」
エースの声に顔を上げたユナは微かな明かりでさえも分かるくらいに顔色が悪く、苦しそうだった。
「おいユナ大丈夫か⁉︎」
『……大丈夫……問題ないわ』
ユナの言葉にエースは険しい顔付きになる。どこが大丈夫なもんか、喋るのもやっとの状態のくせに…ユナの悪い癖だ。
決して弱音の吐かないユナは”大丈夫”、”問題ない”が口癖で大丈夫じゃない時でも言うもんだからよく仲間に怒られていた。