第18章 キミとの約束(前編)
「…こいつァ……」
「へへ、察しの通りそいつは”海楼石”で出来た手枷だ。この街は金属の加工技術が進んでるからな…手に入れるなンざどうって事ない」
「因みにこの女にも同じモンを付けてある…能力者なんざ力を使えなけりゃただの弱い人間だ」
これがその証拠だとブーゲンはユナを軽く蹴り飛ばす、僅かな呻き声がユナの口から漏れた。
「…! おいやめろ!」
「だったら早くそいつを付けるんだな」
「くっ……」
エースは意を決するとガチャリと手枷を自身に取り付けた、瞬間何とも言えない脱力感がエースを襲う。
「…っさァ付けたぞ、ユナを解放しろ!」
「…へっ、そんな約束覚えてねェな!」
「──っ‼︎」
エースが手枷を付けた瞬間ビリーが駆け出すと、エースの顔面目掛けて蹴りを食らわした。
攻撃を食らったエースは成す術なくそのまま吹き飛ばされると壁に激突した…鉄製の壁が僅かに変形する。
「くっ…ゴホゴホ…」
久々に感じる痛覚にエースはよろりと立ち上がる…悪魔の実を食べてからはエースに物理攻撃は一切効かなかった、それは自然系であるメラメラの実のおかげ。
海楼石で能力を封じられた今、エースは生身の人間と変わらない。両手を封じられ能力も封じられ、明らかに不利な状況にも関わらずエースはどこか余裕の笑みを零す。
「──なに笑ってやがる!」
ビリーが叫び再びエースの顔面を殴り飛ばすが、今度は飛ばされる事はなくエースは数メートル後退っただけだった。
口の中を切ったエースはペッと血を吐き捨てる。
「──いや悪りィ…ちょっと懐かしかったもんでな……いいぜ、来いよ。てめェにはこのくらいのハンデが丁度いい」
「…ふざけやがって…! その口利けなくしてやるよ‼︎」
「おいビリー、俺の分もおいとけよ!」
エースとビリーが殴り合う鈍い音が倉庫内に響く。それをブーゲンが眺める中、ユナが微かに身動いだ。
薄っすらと目を開ければぼんやりとした景色が広がった。あれからどうなったのか、薄暗くてよく分からないが何かを殴る鈍い音が何度か聞こえる。