第18章 キミとの約束(前編)
ユナの態度が気に入らなかったのかブーゲンは何度もユナを足蹴にする、初めは呻き声を上げていたユナだったが次第に声を上げなくなり遂には意識を手放した。
「おいそろそろやめとけブーゲン、死んだら元も子もないだろ」
「…大丈夫だろ息はある…ホントはさっきのガキどもを嬲り殺してやりたかったがこいつのせいで台無しになったからな」
最後にとブーゲンがユナを蹴飛ばそうとしたその時──。
「──っユナ‼︎」
倉庫内に響くその声にブーゲンはピタリと止まり、ビリーはニヤリと笑う。
「来たか…”火拳”」
「待ちわびたぜ」
窓から射し込む夕陽に照らされ赤暗く染まった倉庫には、ニタリと笑う人相の悪い男が二人と…その足下には夕陽とは違う紅に染まりぐったりとして動かない栗色の髪の少女の姿があった。
「──ってめェら‼︎ 覚悟は出来てンだろうな…‼︎」
空気が震える──鋭い眼光と共に怒気を露わにするエースにブーゲンビリーは一瞬たじろいだ、だが直ぐに気持ちを持ち直す。
「お前の方こそ状況が分かってんのか?」
ブーゲンは乱暴にユナの髪を掴むとそのままエースに見せつけた。持ち上げられたユナの顔が微かに歪む。
「こいつがどーなってもいいのか?」
不敵な笑みを零す二人にエースは奥歯を噛み締めた。この距離ではこっちの攻撃が届く前に男の手がユナに届いてしまう、ユナの意識が戻れば何とかなるだろうがあの様子ではそれは難しい。
「…どーすりゃいい」
その言葉にブーゲンビリーの口端が釣り上がる。
「簡単だ…”コレ”をつけるだけでいい」
ガシャンとビリーはエースに向けて鉄の塊を放り投げる。自分の前に転がってきたそれをエースは見下ろす…鉄製の手枷がそこにはあった。
「…一つだけいいか?……こいつをつけたらユナを解放してくれ」
「……あァいいだろ、元々俺達の目的はお前だからな”火拳のエース”」
「その言葉──忘れんなよ」
エースは屈むと手枷に手を伸ばす、触れた瞬間身体中の力が抜けエースは思わず片膝をついた。