第18章 キミとの約束(前編)
ユナの剣幕に押され戸惑いながらもタオは言われた通り外へ向かって駆け出した。
「…! 逃がすかよ!」
『──ティエラ(疾風)!』
「な、なんだ⁉︎」
「くっ…!」
突然吹き荒れた突風にブーゲン達は一瞬怯む、その隙を突いてユナはビリーからメリアを奪い取ると持ってたナイフでロープを切り裂いた。
『さ、早く逃げ──っ!』
「そういやお前も能力者だったのを忘れてたぜ」
「おねぇちゃん‼︎」
背後から首をホールドされる形でユナはブーゲンに捕まってしまう。タオ達を気遣い力を抑えたのが仇となったか、ブーゲン達を足止めするには風が弱すぎた。
『いいから行きなさい! タオ、メリア‼︎ ──アポストリアーネモ(送り風)‼︎』
ユナの風によりタオとメリアは出口に向かって勢いよく運ばれていくと、そのまま外へと飛び出した。
「こいつ…余計なマネしやがって…!」
『…がっ…‼︎』
ブーゲンはユナを床に叩き付けた。頭をぶつけた衝撃でユナの思考は鈍る、額を伝う血の感触を感じながら逃げなければと思うが体が思うように動かない。
「おいガキどもはどうする、追うか?」
「いやいいさ、こいつがいればな…”火拳”も時期に来るだろう」
「…だが風使いとは厄介だな」
「なァに”コレ”さえ着ければ能力者は怖くねェよ」
ブーゲンは何処からともなく取り出した鉄製の手枷をユナに取り付けた。
『…‼︎』
ガチャリと鉄の重たい音がすると共にユナの両手の自由は無くなり、変わりに鉄の”無機質な冷たさ”が腕から全身へと広がっていく。
ユナに付けられたのは"海楼石"の手枷だった。
通常悪魔の実の能力者は海に嫌われ、海に入ればたちまち力が抜け溺れてしまう。”海楼石”はそんな海のエネルギーを凝縮した物だ…能力者は触れるだけで力が抜け能力が使えなくなる。
「これで”火拳”も目じゃねェな」
ぐったりするユナを見下ろしながらブーゲンとビリーは不敵に笑う…そんな二人をユナは意識が朦朧とする中睨み付けた。
『はっ…どんな事したって、あんた達なんかエースの足元にも及ばないわよ…』
「…こいつ…まだ自分の今の立場が分かってねェみてェだな!」
『ぐっ…』
「オラ…っ、オラっ!」