第18章 キミとの約束(前編)
「……そいつを庇うのか? お前にとっては何のメリットも無いだろ」
『…だからって目の前で子供が殺されるのを黙って見てられるほど私は”クズ”じゃないわ…貴方達と違ってね』
起き上がりブーゲンを睨みながらユナが言えばブーゲンは下劣に笑う。
「はっ、言ってくれんじゃねェか」
『…貴方達の狙いは私でしょ? この子達は関係無いはずよ、帰してあげて』
理由は分からないが自分のせいでタオ達を巻き込む訳にはいかない。如何にかして逃がしてあげたいがタオは兎も角、メリアの方はビリーが抱え上げている。
風で攻撃しようにもあんなに密着されていてはメリアに当たりかねない…こんな事になるならちゃんと風のコントロールの練習をしとけば良かった。
ユナが敵意を持って風で攻撃すると大体周りも巻き込み破壊してしまうのだ。そのせいかいつも戦闘には殆ど参加させて貰えなかった。
どうする──、考えるユナにブーゲンが徐に近付く。
「まァそうだな…お前が大人しくするならガキどもを解放してやってもいいぞ」
『えっ…』
「動くなよ」
『──っ‼︎』
いきなり顔面目掛けて迫って来た蹴りにユナは咄嗟に腕で防ぐが勢いは殺せず、そのままビリーの近くへと飛ばされてしまった。
「おねぇちゃん…‼︎」
『…くっ…ゴホッゴホッ…』
砂埃が舞う、口の中を切ったのか微かに鉄の味が口に広がった。
「おいブーゲン、”人質”なんだから殺すなよ」
「わーってるよ」
再び近付いてくるブーゲンをユナは見据えた。”人質”──と言う事は他に誰かターゲットがいるのか…そう言えばブーゲンが会った時に”火拳”と言っていた、だとすれば狙いは”エース”か。
エースも心配だがとりあえず今はタオ達を逃がさないと…ユナは目を走らせる。
今、タオにブーゲン達の目は向いていない。問題はメリアだが今のこの距離ならいけるか──ユナは思いっ切り息を吸い込むとタオに向けて叫んだ。
『タオ‼︎ 外に向かって走りなさい‼︎』
「え、え…でも…!」
『いいから! 早く走るのよ‼︎』