第18章 キミとの約束(前編)
どれ程歩いただろう、空は既に茜色に染まっていた。表通りを逸れ路地を抜け、暫く歩けば人通りは無くなりやがて古びた倉庫に辿り着いた…男は錆び付いた鉄製の扉に近付くとギギギと扉を開く。
途中名前を教えて貰った男の子──タオはそこにいた人物を見て声を上げた。
「あっ──、メリア‼︎」
「…! おにぃちゃん‼︎」
薄暗い倉庫の中、窓から射し込む夕陽に照らされていたのは縄で拘束された3歳くらいの女の子と──その隣には額に大きな傷のある屈強な男が一人。
「やっと来たか…遅かったな”ブーゲン”」
「ちゃんと連れて来たんだから問題無いだろ”ビリー”」
二人の会話から察するにどうやらユナ達を連れて来たのが”ブーゲン”、女の子を拘束し額に傷のある男が”ビリー”と言うらしい。
ユナは辺りを見渡した、窓は高い位置についており出入り口は一つ。今はもう使われてないのだろう倉庫内は何も無く埃っぽさだけがあった。
「い、妹を返せ‼︎」
タオの声が倉庫内に響き渡る。
「はっ、返せ? 俺たちを裏切ろうとしたクセによく言えるな」
「ハハハ、聞ィたぜガキ…俺たちをやっつけてくれって言ったらしいじゃねェか」
「…! そ、それは…」
「ひでェじゃねェか、俺たちは世の為人の為に働いてるって言うのに」
態とらしく肩を竦めたビリーは女の子──メリアを引き寄せた。
「やだやだはなして! おにぃちゃん‼︎」
「俺たちが言った事は覚えてるか? ”その女をココまで連れてくる事”。そーしたら妹は返してやると言ったんだ…なのに連れて来るどころか逆に俺たちをやっつけようとするなんざ……許せねェな」
ビリーの眼光が男の子を射貫く、睨まれたタオは一瞬たじろぐが何とか踏み留まり再度「妹を返せ!」とビリーを睨み返した。
「おにぃちゃん…‼︎」
「っメリアを返せよ‼︎」
「…ったく、お使いもままならねェガキがうるせェんだよ!」
『──‼︎』
喚くタオの隣にいたブーゲンはポケットからナイフを取り出すとその腕を大きく掲げ、そして振り下ろす──。
それを見たユナは咄嗟に駆け出しタオを庇う様に横に倒れ込んだ、チリっと腕に痛みが走る。