第18章 キミとの約束(前編)
「野郎どもー‼︎ もうすぐ上陸するぞォ準備しろォ!」
よく通るその声に船に乗っているクルー達は各々準備をし出す、そんな中ユナはある人物を探して船内をキョロキョロしていた。
総数1600人を超えるクルーが乗っている白びけの船、通称”モビー・ディック号”は鯨を象った船首の大きな船だ、その広さは初めてこの船に乗る人は必ず迷子になる程だった。
そんな船内で人ひとり探すのは一苦労。
『うーん、どこ行ったんだろ……あ、サッチー!』
仲間の準備の邪魔にならぬよう歩いていたユナは目の前に居た人物に声を掛けた。
「ん? なんだユナ?」
コック服にリーゼント、左目の横には傷があるこの男”サッチ”はこの船のコックでもあり4番隊隊長だ。
『ねぇエース見なかった? さっきまでサッチといたわよね?』
ほんの数分前、ユナはエースとサッチが一緒に居るのを偶然見かけていた。だから一緒に居ると思ったが残念ながら探し人のエースの姿は見当たらない。
「あァ、エースなら甲板に出てったぞ」
『分かったありがと! 準備の邪魔してごめんね』
「いいって事よ」
エースの居場所を聞くなり掛けて行ったユナをサッチが見送っていると不意に背後から声が聞こえた。
「相変わらずエース大好きだなユナは」
「…ジョズか」
自分の隣に立つ男を一瞥するとサッチは再び視線をユナへと戻した、上陸準備でバタバタする仲間をユナは邪魔にならないよう軽やかに避けている。
「俺たちの時は半年くらい掛かったのにエースにはほんの数ヶ月で懐いちまったからなァ…」
「なんだ妬いてんのかサッチ」
「はは…ちょとな、可愛い娘が男に取られた父親の心境だよ」
「…まァそれは分からなくもないな」
ユナはある日突然オヤジが連れて来た。その時が初対面という訳では無かったが久し振りに会ったユナの姿を見た時はビックリしたのを今でも覚えている。