第17章 神との対峙
まさかここまで手こずるとは…”マントラ”を使って無かったとは言え大した小娘だ。
しかしどうしても腑に落ちないのがあの木の棒だ、何故雷程の光熱を持つ自分の攻撃を防げるのか……まぁ、後から吐かせればいいか。
エネルの瞳が僅かに煌めく、それが合図だった。両者同時に地を蹴ると互いに武器を振りかざす──その刹那。
ドクン──ッ
『──っ⁉︎』
一際大きく脈打つ心臓にユナの視界は一瞬暗くなる、体勢を崩すユナをエネルは見逃さなかった──ユナの腹部目掛けてエネルは思いっ切り槍を撃ち込んだ。
攻撃をくらったユナは僅かな呻き声を上げるとそのまま吹き飛ばされ、巨大な木の幹へと激突した。
『………かっ…‼︎』
衝撃で一瞬息が詰まる、早く逃げなければと頭が警鐘を鳴らすが如何せん身体が言う事を聞かない。やっとの思いで立ち上がった時には既にエネルが眼前まで迫っていた…ニヤリとエネルの口角が上がるのが見える──そして。
自分に迫って来る槍の先端がやけにスローモーションに見えた…。
『…っ、ア"ぁ……‼︎』
エネルは持っていた槍をユナの左肩に突き刺すとそのまま木の幹に貼り付けた。
『……くっ…』
「ほう、まだ抵抗するか…無駄な事を」
『アぁ…っ…!』
何とか槍を抜こうと柄を掴むがエネルに抑えられている為それは叶わない、寧ろ逆に力を入れられ槍が更に深く突き刺さる。
ユナの顔が歪む、肩の痛さもあるがそれよりも黄金の”無機質な冷たさ”が肩から全身へと広がる…それはまるで”毒”が広がっていくかのようにユナの身体を”侵食”していく。
あァ──、気持ち悪い。
一層の事意識を手放してしまった方が楽な程の気持ち悪さと頭痛に薄れる意識の中、必死に抗うが身体は言う事を聞かず、次第に力は入らなくなり遂に槍から手がずり落ちた。
「ヤハハ、さっきの威勢はどうした? もう降参か?」
力無く垂れ下がったユナの左腕は紅く染まっていく…それでも瞳だけは鋭くエネルを射貫いていた。