第17章 神との対峙
『…そうやっていつまでも傲ってると何時か必ず痛い目見るわよ』
ユナは首から下げていた帽子を手に取ると徐にそれを被る。
「残念だがそんな日は永遠に来ることは無い──私は”神”だからな」
『だからそれが”傲り”だって言ってんのよ…っ』
ごめんねエース…”約束”守れそうにないや──…。
何かを決意したユナはエネルに向かって駆け出すと風の刃を放つ、刃はエネルを切り裂くがやはり本体に傷をつける事は出来ない。
『…っ、アネモストロビロス(竜巻)!』
「何度やっても同じ……む?」
ユナが放った風は周りの小石や落ち葉、小枝を巻き込んでエネルに衝突する。どうせ効かないと避けなかったエネルの身体は竜巻により四散した、だがそれは想定内。自然系であるエネルに痛みは無い…筈だった。
四散したエネルの体は直ぐさま元通りに戻り、そして自身の体を見て先程感じた違和感の正体が分かる…なんと全身にいくつもの”擦り傷が出来ていた”のだ。
「…ふむ、これはどう言う──」
『くらえ…っ』
「っ……⁉︎」
いつの間にか眼前に来たユナに気付いたエネルは腹部に鈍い痛みを感じるとそのまま後ろへと吹き飛ばされた。
「な、何が起こったというのだ…⁉︎」
飛ばされながらも体勢を立て直したエネルはユナを見やる…その手にはいつの間にか太い木の棒が握られていた。
どうやらあの棒で殴られたらしい──だがしかし。
『…理解出来ないって顔ね』
ユナが冷たく笑う。
「っ貴様! 一体何をした‼︎」
自分だけ理解出来ていない事にエネルは苛立つ。だが苛立ちながらも状況を整理する…先程の竜巻では身体にはいくつもの擦り傷、そして今度は腹部を木の棒で殴られた。
という事は──。
「……木か」
だが木でも電気を通す筈だ、自分に傷を付けられるとは考え難い…もっと他に何か理由があるのか──。
「──っ!」
突然感じた背後の気配にエネルは飛び退ける──エネルの元いた場所にはユナが木の棒を振り下ろしていた。
『へぇ、中々の反射神経ね』
「貴様……っ」
『二つ──世間知らずの貴方に”お姉さん”が特別に教えてあげる』
ピクリと眉を動かすとエネルはユナを見据えた。