第1章 2016.11月11日 【ゾロ】
とてつもない不安と敗北感が俺を包む。
失いたくないモノが消えていきそうな孤独感。
もう、これ以上我慢出来ねぇと思った瞬間 俺の前に小さな箱が差し出された。
「はぁ?」
「これ、用意してたの今まで・・
本当は後から渡そうと思ったんだけど、ゾロ何か勘違いしてそうだから」
開けて見てと言われ、ブルーのリボンを解く。
中に入っていたのは、シルバーのピアス。
小さな石がはめ込まれていた。
「これって・・」
「お誕生日おめでとう、ゾロ」
えっ?はぁ?
誕生日?!
「今日ゾロのお誕生日でしょ?
ナミ達から聞いて、秋島に着くから頑張って探したんだよ」
探した?
このピアスを?
俺のために?
「大変だったんだからね。
本当は1人で探すつもりだったんだけど、ナミに止められてサンジ君と一緒ならと許可貰って採石場に行ったの」
採石場・・
あの崖か?
「で、やっと見つけたのがその石だよ。
アイオライトっていう、ゾロの誕生石なんだ」
得意げに笑うは、角度を変えると青や紫、黄色へと変わる石を指差していた。
よく見ると頬に微かな擦り傷がある。
手にも、刃物を使った様な小さなキズと黒い汚れ。
シルバー加工時に着く汚れと同じだった。
「お前が作ったのか?」
「うん、ゾロへの初めてのプレゼントだもん。
特別な物を渡したかったんだ」
掴んでいた手を引っ張り、の身体を抱き締める。
何も考えていなかった。
いつもは触れてもいいか、触れて嫌われないか、様子を伺っていたのにこの時は感情任せだった。
「・・ゾロっ」
「悪い、もう少しこのままがいい」
情けない声。
だが、今離す事は出来そうにねぇ。
「・・うん、私もこのままがいい」
「!!?」
宙を彷徨っていたの手が俺の背中に回る。
それだけで俺の心臓が飛び跳ねた。
「・・その石ね、アイオライトは羅針盤に使われていた石でもあるの。
航海のお守り、大切にしてくれたら嬉しい」
「あぁ、ありがとうな」
不安だった想いが消えていく。
自分でも単純だとは思うが、それぐらい嬉しかったんだ。