第3章 君は友人の弟の友人
テスト前日。
数日の勉強会はこれで終わり。
少し、寂しく思った。
だって、楽しかったから。
こんなに距離が近くなるなんて思わなかったから。
特に勉強会が終った後に西谷くんとしゃべりながら歩く帰り道は楽しかった。
皆より小さな背の彼だが、155センチの私よりは少し高い。
ヒールを履いたら追い抜いてしまうだろうか…。
立場的にも、年齢的にも、保護者は私の方になるはずだが、西谷くんはちゃんと紳士で。男性で。
「家は烏野商店街の近くだから、遠くないし大丈夫だよ」と言っても、
「女性独りじゃ危ないです‼」と家の前まで送ってくれた。
彼は必ず車道側を歩いてくれていた。
大学の授業の事やサークルの事、
あまり行った事は無いけれど、合コンの事なんかを聞かれた。
今の烏野の様子や
バレーボールの楽しさ、
自分のポジションであるリベロに誇りをもっていることを教えてくれた。
「春高予選、見に来てください‼応援多いと燃えるんで‼」
そう、キラキラと目を輝かせる彼に、
「冴子と行くね」と答えた。
最後の帰り道。
「いつも送らせちゃってごめんね。テスト頑張れ」
そう言って、ハイタッチを交わして、家の前で西谷くんと別れた。