第3章 君は友人の弟の友人
冴子に『うちの弟ともう一人の夕の頭の悪さは保証する』と言われたけど…。
まぁ、なかなか。
それでも、ちょっとやんちゃそうな見た目とは違い、西谷くんは素直な子だった。
ちなみに龍くんが素直なのは前から知ってる。
他の子達が悪い子じゃないのは見た目でわかる。
ときどき集中力が切れて、嫌だ嫌だとごね出す龍くんと西谷くんの手綱を、一番大人しそうに見えた縁下くんがしっかりと握り、成田くんや木下くんも「東京行けないぞー」と二人をせっついて、勉強会は進んだ。
「龍くんと、西谷くんは任せてもらっていいよ。皆も分からない所は聞いてくれていいよ」
そう言えば、「いいんですか?」と言いながら、皆が教科書を開きはじめる。
はじめは遠慮していた男子高校生達もだんだん慣れてきて、積極的にわからない所を聞いてくるようになった。
特に「君夏さん、君夏さん」と懐いてきた西谷くんは可愛かった。
弟って、こんな感じなんだなって、
冴子が龍くんを可愛がるのがよく分かるなって、
そう思ってた。
私は兄弟がいないから、
一人っ子だから、
余計に可愛く思うんだって、
そう思ってた。