第11章 想いは傷口を生む
「澤村、代わる。戻れ」
扉から顔を出したのは烏養さん。
武田先生ではないんだろうか…。
否、文句はないけれど。
澤村くんに何やら指示を出して、「まだ、終わらねぇのか?」と腰を下ろす烏養さん。
ピタリと4人の手が止まってしまう。
本当にもう…。
「烏養さん。そう言う事言っちゃダメです。やる気が削がれます」
一瞥を向けると、長い腕が延びてきて、「わりぃ、わりぃ」と私の頭に手を置く。
ここ数日で思ったんだけど、この人、人との距離が近いと言うか、割りと平気で肩に手を置いたり、頭を撫でたりしてくる。
行成のバレーを見に行った時は、もっと…怖いと言うか、近寄り難い雰囲気の人だった。
怖いのも嫌だけど、この距離無しな感じは、ちょっと苦手だ。
「だから、やめて下さい」
置かれた手を払うと、
「なんか、いい感じっすね」
と西谷くんの声がした。