第11章 想いは傷口を生む
カリカリとペンを走らせる音が響くハズなんだけど…。
響いているのは、「…うーん」と頭を抱えるうなり声。
部室を借りて、
どこからか持って来た机を並べて、
課題に向かう4人組。
勉強会をはじめて一時間程。
4人以外に課題を持って来た部員も2~3人居たが、その人達は要点さえ教えてしまえば、残り少ない夏休みの課題をさっさと終えて、体育館へ戻って行った。
しかし、彼らのペンはちっとも進まない。
そして、課題の量は戻って行った人の比ではない。
「日向くん。ここはこれを代入して…」
「影山くん。これはさっきと同じ公式ね」
「龍くんと西谷くんは、英単語が解らないなら、にらめっこしてても進まないから、辞書引こう‼」
「なんか…すみません…」
そう言って頭を下げるのはキャプテンの澤村くん。
4人組の監視といった所だろうか?
「ううん。気にしなくていいんだけど、澤村くんは練習いいの?ちゃんと終わらせるから任せてもらって大丈夫だよ」
「もうすぐ武田先生が来るんでそれまでは…。流石に任せきりは申し訳ないです」
本当に申し訳なさそうに頬を掻く彼は、きっと真面目なんだろう。
「キャプテンも大変だね」
「ははっ、まぁ…」
そう、曖昧な返事が返ってくると、
ガチャリと部室の扉が開いた。