第5章 プレー中の君は別人
さっきからドキドキと自分の心臓がうるさい。
目線の先には彼が居る。
あれ、西谷くんだよね?
そんな風に疑問に思う程、
プレー中の彼は雰囲気が違っていた。
勉強会の時に龍くんと駄々を捏ねて騒いでいた彼とは違う。無邪気な笑顔とは違う。
虎視眈々と言うのだろうか?
静かに、熱く、ボールを狙う目。
見惚れてしまう程、真剣だ。
あれだ。ギャップってやつだ。
観に来た事を後悔した。
蓋をするどころか、すっかりはまっている。
この体育館にいる選手の中で誰よりも小さな彼。
高校生の彼。
そんな彼から目が離れない。
まるで取りつかれたように、私の視線は彼を追い続けた。