第2章 番外編 第二話「割烹着の話」~鬼蜘蛛丸~
「うーん、やっぱり全部同じようなものなのか……」
呻りながらそう言って、ふと店の隅を見た時。
鮮やかな赤色が目に入った。何となく、麻言の少し赤みがかった髪色を連想する。
思わず手にとってみたそれは
「お?それ、もしかして割烹着じゃないのか。随分ハイカラな色があったもんだなあ」
「あっ、お客さんそれね。実は染物屋さんに頼んだものの中に間違って、混ぜちゃってた物がそんな色になって戻ってきたんだよ~」
割烹着に見入っていた私の代わりに「ほう~」と義丸が相槌を打っていた。
綺麗な色だと思った。割烹着にしては少し派手なのかもしれないが。
私が見ていたのは裏側だったため、くるりと回して正面も見てみる。
服の裾に小さな白い梅の花が幾つもちらしてあり、こういうのは女性は好きなんじゃないだろうかと思った。
「その梅は私が後で描き入れたんだよ。丁度紅白な感じでなんかめでたいだろ?」
「――これにします」
気付けば即決していた。
驚いたように店の店主と義丸が目を丸くしている。
「おやおや、買って下さるので?」
「へえ、まあ色味は少々派手だが梅の模様は良いものな。珍しく良い物を選んだじゃねえか」
店の店主が嬉しそうに言うが、義丸は私をおちょくっているかの様ににやにやと笑っていた。
それに私は曖昧に苦笑で返す。
そして、もう一度割烹着に目を移した。
これは、麻言に似合いそうだ。喜んでくれると良いんだが。
そう思うと妙に気持ちが弾むのを感じた。