第2章 番外編 第二話「割烹着の話」~鬼蜘蛛丸~
「はあ?割烹着を贈りたい?」
「そうだ。麻言に私のを一着あげたんだが、ぶかぶかで調理がし辛そうでなぁ」
お頭に頼まれた買い出しに連れてきた義丸へそう言うと「成程ね」と一言。
船の道具として使う縄の補充と桶を頼まれたのだが、そのついでに麻言の割烹着を買いにきたのだ。
そして、付き添いに義丸を選んだ理由は、こいつが女性相手の贈り物等に詳しそうだからだ。
「割烹着くらい、麻言の丈に合った普通の物を買ってやったら良いんじゃないのか?」
「まあな。しかし、朝昼晩と水軍の飯の支度をしてくれる麻言にちょっと良い物を贈ってやりたくてな。だが、私は流行りの物は疎い上に女性の喜びそうな物となると正直解らなくて――」
と話してる途中、義丸がまるで珍しいものでも見るような目で見ていたのでつい黙ってしまった。
「なっ、何だ義っ。変な顔して」
「色男に対して変な顔とは失礼だな。否、ただ鬼蜘蛛丸が誰かに物を贈ることへそんな拘りを見せるとは思ってもみなくてよ」
色男は余計だろと突っ込みを入れたくなったが、そこはあえて黙っておき「そうか?」と聞き返す。
別に拘っているつもりはないんだが。
ただ、折角だから本人に似合いそうな物を贈ってやりたいと思っただけなんだがなあ。
「ふむ。まあ、海の事以外あんまり興味のないお前がそう言うんなら協力してやらなくもない」
「はははっ、何だよその上から目線は。だが、まあ助かるよ」
それから二人で割烹着を売ってそうな店を何件か回る事にした。
だが、私にはそういう物を見る目がないのかどれもこれも同じに見える。
しかし、義丸も同意見だったのか「割烹着なんざ、どれも同じように見えるな」と言った。