第2章 番外編 第二話「割烹着の話」~鬼蜘蛛丸~
「あ、じゃあ私の割烹着の方は引き取ろう。また使う事もあるだろうしな」
「ああ、確かにそうですよねっ。じゃあ僕洗ったらまたお返ししますね」
「そんな、気を使わなくていいぞ」
「いやいやいや、それは駄目ですよ~」
そんなやり取りをしていた時。
びしっと私の後頭部に衝撃が走った。
慌てて振り向くと、義丸が半目で私を見ている。
しかし、すぐにニコリと笑うと
「――お頭っ、はい!お使いの品です」
私の手から素早く桶を奪い、自身の懐に入れていた縄をお頭に見せた。
「おおっ、すまねえな……!あっ、悪いんだが義丸、その二つ用具庫の方に置いといてくれないか?」
そうすまなさそうに、両手を合わせてお頭が言うと「ええ、解りました」と義丸が言って
「――あっ、お頭。ちょいとお話があるんで、用具庫にいくついでに付き合って頂けませんか?」
「俺に?おお、構わねえぞっ」
義丸がそういうと、お頭を連れて用具庫に向かって往く。と。
義丸がすっと素早くこちらを振り返ると、片方の目を瞑ったのだ。
それを見てなんとなく。
あの妙に気が利く同期が何を言いたいのか、解った気がした。