• テキストサイズ

ただの女、男二人【進撃の巨人】

第8章 夢


日に日に暖かさが増し、すっかり過ごしやすくなった春。
ビアンカは勤め先の古書店で本の整理をしていた。
売り物にならない程に色褪せたもの、湿気のせいでうっすらとカビが付いたもの。
ひとつずつ選別したこれらは、もったいないが処分するしかない。

「ふぅ…。こんなもんかな」

埃にまみれた手のひらをパタパタ叩き、ビアンカははしごを降りる。


「ビアンカ」


「はい?」


「帳簿の収支、また間違ってたぞ」


近づいてきた店主がノートのページを開き、ミスのあった箇所を指した。
それは確かに、昨日ビアンカが記した数字。


「すみません…っ!」


慌てて頭を下げる。
つい最近、同じような間違いを二度も指摘されたばかりなのだ。


「どうした?前はこんなミスしなかっただろう?」


「はい…」


俯くビアンカを見遣り、店主は小さくため息をついた。
帳簿を閉じ彼女に半分背を向ける。


「明日は休みなさい。しっかり休養をとって」


「はい……」


そもそも、客の出入りから考えて二人も人手がいる店ではない。
こんなミスをしていては、休みどころかクビにされてしまう。
ビアンカは店主の背中に向かってもう一度謝罪すると、大きく肩を落とした。









「ビアンカ?」


日没後。リヴァイはいつものように、彼女の部屋に顔を出す。

室内は真っ暗でランプも灯っていない。
物音もしない。
丸く布団が盛り上がったベッドを見て、ビアンカがそこにいることだけはわかった。


/ 97ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp