• テキストサイズ

ただの女、男二人【進撃の巨人】

第6章 二人





「あの夜、血に濡れた手を綺麗に流してくれたのはビアンカだ」



リヴァイの脳裏に、初めて人を殺めた夜が映る。
瞳から大粒の涙を流しながら抱き締めてくれたのも、一晩中寄り添ってくれたのも、目の前にいるビアンカだった。


ビアンカの手を強く握り直し、揺れる瞳を真っ直ぐ見据えてみる。


ケニーばかりを追うこの瞳に、胸が焦れたこともあった。
早く、大人になりたかった…。




「ビアンカが普通の女でいられるなら、どんな汚いことでも俺が代わってやる」




ビアンカは目を見開いたあと、遣るせない思いに息が詰まりリヴァイから顔を背けた。



「……そんな風に言わせちゃうのは、私が弱いからね…」



悲しそうに目を伏せてしまったビアンカの顎に手を添え、もう一度自分の顔と向き合わせる。



「違う。俺がビアンカを守りたいからだ。だから…そばにいてくれよ…」



ビアンカが今、どんな思いで自分を見つめているのか。
知りたい、確かめたい―――。



「ずっと…、そばに…」



顔に触れたままの手に、心持ち力を入れる。
ビアンカの心を探るようにゆっくり距離を詰めると、震える声がじわりと届いた。



「私…、リヴァイが好きよ。
でも…これが恋なのか、家族に近い情愛か、自分でもわからないの。それなのに、リヴァイが誰か他の女の子と…って思うと、それは嫌なの……」


ビアンカの言葉はリヴァイの体の芯を熱くさせた。
戸惑った様子のビアンカの頬を、そっと撫でる。



「勝手だな」


「ごめんなさい……」


「ビアンカが嫌なら、これ以上のことは止める」


止める、なんて言いながら、リヴァイは既に両手で冷えた頬を包み込んでしまった。
唇と唇はもう触れてしまいそうだ。
リヴァイを見るビアンカはもう、瞳を逸らせようとはしなかった。


「リヴァイも狡い…」


頬を染めてそう言うビアンカに、リヴァイは熱情を込めた声で囁く。



「ずっと、好きだった」



やっと触れられた。


沢山の歳月。
積み重ねたビアンカへの想い。
その愛しさの分だけ、リヴァイは優しく、柔く、口づけた。



/ 97ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp