第4章 誰がために
「飲み過ぎたついでに聞くが…」
ケニーの瞳から笑みが消える。
彼らしくもない、やや張り詰めた間を作った後、静かな声がリヴァイに問う。
「お前には、守りたいものがあるか?」
「………」
初めてナイフを赤く染めた夜。
あの時は、自分のしたことに言い知れぬ恐怖を覚え手が震えた。
けれどビアンカを守ることができた自分に、やっと生きる意味を見出せた気がした。
「あるさ。俺の力は、そのためのものだ」
ケニーは目を細める。
真っ直ぐで揺らぎようもない、ビアンカへの想い。
守るべき者がいることで、強くなったリヴァイ。
同じ血が流れている―――。
「いい面だ。お前、だんだんクシェルに似てきたな」
「……」
「酔い覚ましに少し出てくるわ。先に寝てろ」
「ああ…」
いつもそうするように、帽子とコートを手に取る。
目深にそれを被ると、部屋を出る間際、リヴァイを振り返った。
「リヴァイ」
「?」
「おやすみ」
「ああ、おやすみ」
軋む音を響かせながら、扉は閉ざされた。