第2章 過去 ※
「リヴァイ、今日の夕飯にこれ持って帰って」
ビアンカは温かく煮込んだシチューの鍋を、リヴァイに手渡した。
「ビアンカの分は?」
「大丈夫。ちゃんとあるから。今日はケニー留守でしょ?鍵かけるの忘れないようにね」
「わかってる」
そう言って鍋を受け取るリヴァイの腕は、筋肉と脂肪が程よく付いている。
二年の間程々の食生活を続けるうち、リヴァイの見た目は他所の子どもと大差なくなっていた。
「気をつけて帰ってね」
「ああ。じゃあ…」
扉の前でリヴァイを見送り食事を取ろうと椅子へ座ったところで、テーブルの上に置かれたままの古着が目に入った。
身長はまだ低いものの、リヴァイは成長期を迎えている。
以前から着ている衣服が若干小さくなってしまったため、近所の少年からお下がりを貰っていたのだが、渡すのをすっかり忘れていた。
「……」
まだ家には着いていないだろうし、あとを追おうか迷う。
外はだいぶ暗い。
できるだけ夜に出歩きたくはないのだが、少し出るだけなら問題ないだろう。
そう思い至り、ビアンカは部屋を出た。
ケニーの家は程近い。
人気のない細い道を通らなければならないのが厄介だが、いざとなれば走って逃げ込むこともできる。
そんな安易な考えがいけなかった。
家を出た瞬間から、その影はビアンカのすぐそばまで迫っていたのだ。