第1章 地下街の三人
「いいか、リヴァイ?急所を狙え。急所ってのは色々あるが、てめぇの身長ならまず膝に腎臓だな」
そう言いながら向かってくる男を交わし、膝を蹴り、背中に拳を一発入れる。
「それから脛に足首。あー、ついでにタマもやっとくか」
もう一人の男は足を重点的に狙い、思い出したように最後に股間も蹴り上げる。
「ぐ……っ!!」
「~~~っ……!!!」
ケニーは地面にへたり込む二人に近づくと、懐から裸のコインと紙幣を取り出した。
「返してもらうぜ?ちったぁ多いが、あとは慰謝料だ」
リヴァイはただ黙ってそれを見ている。
行き交う人々も、大して珍しくもないその光景にチラッと目を向けるだけで通り過ぎていく。
「これがここでのご近所付き合いってやつだ。帰ったら今度はナイフの使い方教えてやるからよ」
コートのポケットに金を捩じ込みリヴァイに向かって物騒な提案をすると、ケニーは何事もなかったかのように来た道を帰っていく。
まだ悶絶する二人を見下ろした後、リヴァイも小走りでその場から去って行った。
リヴァイが教わったのは、ケニー曰く"ご近所付き合い"、ナイフの握り方、挨拶の仕方、身の振り方。
堅気のそれではなかったが、治安の悪い地下街で生きようとするならばそのくらいで丁度いい。
元来の運動神経とセンスの良さもあり、リヴァイはケニーの教えることをグングン飲み込んでいく。
月日は流れ、リヴァイとケニーが暮らし始めて二年程が過ぎた。
リヴァイはと言えば、以前襲われた小悪党くらいならば返り討ちにできる程、力をつけていた。