第11章 昔話〜桐山照史〜 *
我慢なんてそう長くは続かなくて、
結局オトンとオカンは
虐待したとして警察に捕まった。
俺は引き取り手もなく施設に送られた。
知らない場所に来て、
人との接し方がよく分からなくて
そんな俺は思った。
楽しく笑ってなきゃあかん、って
「俺な!桐山照史って言うねん!」
よろしくな!
施設の人みんなに言い回って、
分厚い壁を作った
誰も踏み込まんようにと、
予防線を張った。
傷だらけなんだって思いたくなかった。
思われたくも、なかった。
淳「照史!!」
淳太と再会したのは、
俺が施設に来て数週間後の事だった
「…じゅ、んた…?」
淳「良かった!捜してたんやで」
捜してた?
なんで?
たかが仲良いだけやろ?
友達でもない俺を?
捜してた…?
淳「オトンがな、照史のこと見つけてくれて
ずーっと心配しとったんやで?俺もオトンも」
「なんで?俺平気やしっ!この通り強いしな!」
へへへ、と誤魔化し笑うと
淳太の心配そうな顔は変わらなかった。
淳「公園にまったく来なくなってビックリしてん
学校に聞いたらもう半年も来てへんって…」
「ああ…はは、まあ引きこもっててん!」
淳太にだけは、
弱い心を見せたくなかった。
弱りきってズタズタになって
傷でいっぱいの、この心を見せて
笑っていられる自信がなかったから。