第20章 君のためと
ーー智洋side
『さよなら、智くん』
嫌な夢を見た。
それもの部屋で。
お別れの時に背中だけ、って
そんな悲しいことないやん
パチッと目を開くと
部屋を出ようとするの姿
せやから、どこ行くん、って止めた。
正夢になるかもしれへん
意識の奥の奥で、
俺はなんかそう感じた。
と初めて会ったときは、
いつも泣きそうやったし
俺らと仲良くするのも怖がってた
家族という形にこだわらない、
その代わり俺は兄としてやなくて
1人の男として、と接してきた
その方が縛りがなくて、
にとって
安心すると思ったからや。
それが今になってアダになった
「…智くん」
「んー?なんやぁ?」
「お腹減った」
「ふは、せやな。なんか作ろか」
家族の形はこだわらない
例えが去ってっても、
俺は追いかける覚悟はあるし
それが出来る自信がある。
それだけ大事に思ってきた。
でも、俺だけじゃダメなんや
好きになることって、
相手の意思とかも大事やろ。
こいつにとって俺らが
ずーっと兄であるならば、
好きを諦めざるを得ない
だけどそうなったとき俺は、
諦められる自信がない
「朝はやっぱりフレンチトーストだね」
「よっしゃ!美味しいの作ったるわ」
片思いって、俺みたいなことを言うなら
両思いってどんなんやろ。