第11章 昔話〜桐山照史〜 *
幼い頃の俺の家は、
オカンもオトンも俺が嫌いだったし
疎ましく思っていたと思う
ろくなご飯も貰えなく外にも出られなくて
『あんたなんか産まなきゃよかったわ
そうすればもっと私は自由やったのに』
そう言ってタバコを吸うオカンは、
オトン以外の若い男と
遊び歩いては帰りは遅かった。
オトンは働いてはいたものの、
中卒という学歴だからなのか、
会社のヤツらに馬鹿にされていた
そのストレスで俺に当たり散らした。
「…ったい、」
9歳の俺が、周りに助けてくれと
ここから逃げ出すのは困難だった。
何せ周りの関わりなど無いに等しかったからだ
『2度とその汚たねえ面見せんなや』
酒に溺れたオトンを見て、
痛みに悶える自分なんて
ほんまはちっぽけで薄い存在なんやって
苦しみながら考えた。
このまま意識を失って、
静かに死ぬってのも悪くないな
どうせ友達なんか居らんのやし…
あ、そういや淳太どうしてるんやろ
偶然、公園で知り合った淳太は
こんなズタボロな姿でも何も聞かずに
仲良くなってくれた。
俺の唯一の友達だった。
あいつは悲しんでくれるやろか?
なんで居なくなんねんって怒るやろか?
俺が助けてくれって言ったら、
助けてくれるやろか…?
「…腹減った…」
期待したらあかん、
ここから出してくれるはずない。