第3章 失恋
知らなかった。
恋が苦しくて、辛いものだなんて。
もっと楽しくてハッピーで、
心が踊るようにドキドキわくわくするって
思っていた。自惚れてた。
望「!!」
馬鹿でかい声に、嫌でも望だと気づいた。
バッと反射的に顔を上げたら
望が汗だくで走ってきていた。
「…望?」
望「なん、で、泣いてん…意味わからんし…」
くそったれ、って
不機嫌そうな顔をする。
「…望には関係ない」
望「ある」
「ない!」
望「あるわ!大切な人なんやぞ!」
「…っ!」
恥ずかしそうに、視線をそらす。
望「知っとるよ。大倉が好きやったんやろ
最初から今も、馬鹿やな、あほやって思った」
でもな、って
からかうような顔から
優しい顔になる
望「好きになるってそういう事やん」
よいしょ、
と隣に座った望は
私の手を握った。
それは暑くて熱かった。
「なんでここが分かったの?」
河川敷に来るのは誰も知らないはず
自分の居場所で、
好きな場所
それは誰にも言っていなかったはずだ
望「分かるで、兄ちゃんやからな」
へへ、と笑った望は
頬を赤くしてまた視線をそらした