第12章 昔話〜重岡,神山,藤井〜 *
この時の俺は月1のペースで
母親と面会することが許されていた。
『大毅!背ぇ高なったなぁ?』
「せやねん!めっちゃ伸びてん!」
ただ、純粋に嬉しかった。
孤独な2人の気持ちを知りながら、
かなり残酷だったと思う。
智「しげはええなぁ、オカンがおって」
流「まあ、あいつはあいつなり悩んでんねん」
せやなあ、とため息のようなその一言は
俺の大声でかき消された。
「かみちゃあん!りゅーせいっ!」
智「しげうっさいねんほんまに」
流「なんやねん」
2人は時々、気まぐれに
施設外の公園に行く時があった。
神ちゃんは趣味程度ではあるが、
ダンスを踊り、
その横で流星が真似をする。
智「流星上手なったなぁ」
流「コツ掴んだ。すごいやろ」
「すげえな、流星!」
神ちゃん、流星、
2人と居ると楽しかった。
ほんまの俺で居られて楽だから。
ゲラゲラ遠慮なく笑えて、
ふざけて騒いで。
だからこそ、気付かへんかった。
2人の気持ちにも、思いも、
そして俺の純粋な気持ちが
2人を苦しめていたってことに。