第2章 診療録管理規定
「音楽療法には国家資格はないのか。」
元々俺は国家資格を取るつもりでいたが音楽療法への興味がますます湧き、こちらの日本音楽療法学会の『認定音楽療法士』の資格も受けてみたいと思った。
この資格を得るには高校卒業後に大学、短大、専門学校で学び、さらに医療や福祉などの現場で5年以上の臨床経験が必要となるらしい。その上で、日本音楽療法学会の講習会に参加する必要もあるなど、簡単な道ではない。他に、全国音楽療法士養成協議会の『音楽療法士専修・1種・2種』といった民間資格も存在する。
「5年は働かなきゃまずいのかぁ~。」
アパートに帰宅すると部屋の中は静けさでこもっていた。
パチンと明かりをつけて玄関の鍵を閉めると俺はベッドに横になった。
「あー来年就職活動だな。どうしよう。療法士になったら医療施設や福祉施設で働くんだろうな。」
なんて自分が想像できない。本当に就職できるのだろうか?
「いや、待てよ。能動的音楽療法!?そんなのがあったのか。」
話には聞いていたが実際に見るのは初めてだった。音楽療法と言えばクラシック音楽だけだと思っていたのであそこまでの体操をやるとは思ってもみなかったのだ。
「なるほど。これは自分を変えるチャンスかもしれないな。やれるだけのことをやってみよう。」
俺は思い立ってベッドから起きると夕食の支度にとりかかった。
翌日、俺は元気よく大学へ通った。午前の授業も終わりお昼の時間となった俺は友達との昼職の時間で昨日の実習について聞いてみた。
「みんな、昨日の実習どうだった?」
俺は大学の友達に声をかける。
「昨日の実習は疲れたよな。俺も病院食食いたかったな。」
と、話すのは大学で1番食い意地が張っている結城護(まもる)だ。俺らの呼び名は”小杉”である。小杉とはちびまる子ちゃんで有名なあの少年の事だ。見た目が似ているためそう名付けていたが今は結城に戻った。
「病院食って・・・実習に来てたんでしょう?だったら無理よ。」
そこに突っ込むのが俺の唯一の女子の友達である黒崎さやだ。
彼女は容姿端麗と言ってもいいのだが心に闇を抱えた腑に落ちない性格の子だ。そして彼女の隣でアイフォンを手にしているのは 柊(ひいらぎ)悠人 だ。彼の行動はすべてが謎で俺にもわからないでいるが話せば理解のある奴だ。