第5章 驚きと幸せを【鶴丸国永】
【燭台切】
朝、本丸は騒がしかった。
「桜が…桜が咲いてます!」
粟田口の短刀たちが庭に出て騒いでいた。
「咲くのはまだ先だよね?」
「ああ…」
長谷部くんと桜の木の方を眺める。
「主の持っていた書物で読んだ事がある。季節外れの桜が咲く時、奇跡が起きる……と」
「奇跡?」
奇跡…か。
「長谷部さん!主が…」
今日の近侍である堀川が長谷部くんの元へ向かって来た。
「堀川…主がどうした?」
「主…部屋に居ないんです。刀装部屋も、鍛刀部屋にも…」
こんな朝早くから主がどこかに行く事なんて殆ど無いのに…
「ねえ、桜の方に誰か居ない?」
乱が桜の方を指差し、皆が桜を向く。
「主かもしれない!」
堀川が走り出し、僕たちも堀川の後を追った。