第1章 想いよ、届け(及川徹)
五ヶ月付き合った唯と
別れようと決めたのは、
二年になってからすぐだった。
きっかけは、
俺に彼女がいることをよく思わない
一部の女のコたちが、
唯を悪く言い始めたこと。
俺は本当に唯のことが好きだったし、
彼女も好いてくれていたと思う。
でも、だからこそ、
俺は唯が傷つくことに
耐えられなかった。
幼稚だった俺には、
彼女を自分の力で守るなんてことは
考えつかなくて、
彼女をいじめから解放するための方法なんて、
別れること以外には見当たらなかった。
その選択が
唯をより傷つけることになる、
なんて思わなかった。
その選択が
俺と唯をこんなにも引き離す、
なんて想像していなかった。