第2章 初恋(木兎光太郎)
すっかり先輩はそういうゲスだと
思い込んでいた私は、びっくりして思わず
飲んでいたお茶を吹き出してしまった。
「う、嘘だぁ!」
『嘘じゃねぇよ!
てかおまえに嘘ついて
俺に何の得があるんだよ…』
露骨にげんなりしている先輩が珍しくて、
笑いがこみ上げてきた。
(先輩、かわいい…)
「すみません、ずっと先輩には
それはそれは可愛い彼女さんが
いらっしゃるものだと思ってて」
『…てか、いたことすらねぇよ』
「意外ですね」
『そうか?』
「はい、だって先輩かっこいいし」
そう私が言った途端、
目に見えて先輩の表情が変わる。
少しのことで顔色が変わる様子は、
まるでカメレオンみたいだ。