第1章 想いよ、届け(及川徹)
唯はあまり言いたがらないけど、
本当は女優の卵。
そうだからかなんなのか、
明らかに練習不足だったのに、
そんなことは全く感じさせない。
これといったハプニングもなく、
出し物は佳境に差し掛かった。
「あぁベル、戻ってきてくれたのか…
これで俺は…俺は幸せに死ぬことが出来る」
俺が扮する瀕死状態の野獣がうめく。
『いいえ、貴方は…
貴方は私の夫になるのです…!』
ベルに扮する唯がそう叫ぶと、
俺の衣装は一転し、野獣から王子になった。
本当はここからすぐキスシーンで
それが終わると同時に演技も終了、
のはずだった。