第10章 美食×谷底×再試験
「確かに試験官として見れば問題もあろうが、一つ星ハンターの称号を持つ美食ハンターとしては無理からぬこと…。よって、料理に対する情熱の証というわけじゃ」
ネテロ会長の言い分には少し無理があるような気もしないでもないけれど、まぁ確かにしょうがないと言えばしょうがないのかもしれない。
斯く言う、ニール兄さんにも少なからずそうゆう部分があったし…。
とゆうか、ニール兄さんよりも今回のメンチさんの方がまだマシな気さえした。
「えぇー、ではこうしよう」
ネテロ会長の声で働かせていた思考を一度遮断して、その言葉に聞き入る。
「再試験を行うこととして、メンチ君には引き続き審査を続行してもらう…」
誰もが待ち望んでいた“再試験”の言葉に、この場にいる人間の多くが喜びを露わにした。
しかし、中にはネテロ会長の采配に納得出来ない人も居るんじゃないかと疑問に思う。
現に不服そうな顔をしている人間が何人かいる。
「そのかわり新しい課題には審査員の君にも、実演という形で参加してもらう……とゆうので、如何かなぁ?」
それを察してのことなのか、受験者達に視線を巡らせて有無は言わせないとでも言うように微笑んで見せるネテロ会長。
「その方が彼らも、合否に納得がいくじゃろう」
ほっほっほと髭を撫でている彼はただの老人に見えなくもないけれど、その分底が知れない人だと…何となくそう思った。
『再試験だって!』
『あぁ…よかったな、ゴン』
私の横でゴンが嬉しそうに言い、キルアが優しい顔付きで言葉を返す。
再試験は彼自身のことでもあるはずなのに、その物言いはやはりどこか他人事のように感じさせる。
『うん!』
ゴンのように無邪気で居られない何かが、彼にはあるのだろうか。
少しだけキルアの心に近付けたら、なんて考えている自分に驚いて、何となく二人から目を逸らした。
「で、試験の内容は?……試験官」
どこか楽しそうに言うネテロ会長の言葉に、先程までざわついていた受験者達が黙り込むのがわかる。
「そうですねぇ…」
数秒考え込む素振りを見せたメンチさんは、ゆっくりと顔を上げて口を開いた。
「それじゃあ、課題は……」
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