第10章 美食×谷底×再試験
「で、メンチくん?」
「はっ、はい!」
さすがのメンチさんも緊張しているのか、さっきまでの覇気は微塵も感じられない。
ただ俯いて、ネテロ会長の次の言葉を待つだけ、という感じだ。
「君は二次試験の後半において、料理を通して未知なるものに挑戦する気概を彼等に問おうとしたのじゃな?」
そう、それが当初メンチさんの課題の目的だった。
「そうなんです!!」
ネテロ会長の言葉で勢いよく顔を上げ、早口で話し出すメンチさん。
「あたしの目的はまさにその一点にのみあった訳で…そのために、特に難度の高い課題を出したはずだったのに!」
「はずだった、とは?」
上手くメンチさんの言葉を遮ったネテロ会長が、何かを探るような目つきでメンチさんを見つめる。
「ぁ、ぃ、いぇ…」
すると、言葉を詰まらせたメンチさんがそのまま口を開かなくなった。
「最後までその目的で審査した結果、全員その態度に問題あり。
つまり…、不合格と判断したのではないのかな?」
優しい声音で問いかけるネテロ会長に対して、メンチさんは明らかな動揺を見せた。
これは……、ひょっとしてひょっとするのではないだろうか。
「いえっ!!テスト生に料理を軽んじる発言をされてついカッとなり、その際料理の作り方がテスト生全員に知られてしまうトラブルが重なりまして…。頭に血が上ってるうちにお腹いっぱいになって、それで…」
「つまり、自分でも審査不十分だと認識しているということかな?」
最後まで微塵の怒りも見せないネテロ会長に戸惑ったのか、メンチさんは数秒黙り込んで頷いた。
「はい、料理のこととなると我を忘れてしまって…。審査員失格です…、すみません」
ネテロ会長に向かって深く頭を下げたメンチさんは、弱々しくそう言った。
「ほっほっほっほ…、正直な娘じゃ」
その姿を見て高らかに笑ったネテロ会長に、メンチさんだけでなく私を含めた受験者達も驚く。
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