第9章 丸焼き×sushi×失格!?
「冗談じゃねぇぜ!!」
「こんなふざけた判定があってたまるか!!」
口々に怒鳴り散らす受験者達の言いたいこともわからないではない。
けれど結局、決定権はハンター協会側の人間であるメンチさんにあるのだから、この場でどうこう言っても、この決定は覆らないだろう。
私自身納得出来るかと言われるとそうでもないけれど、納得せざるを得ないのだ。
思ってもみなかった試験結果に溜息をついていると、メンチさんの背後にそっと近づいて行くゴンの姿が視界の端に映った。
「とにかく!!あたしの結論は変わらないわっ!二次試験の料理審査合格者はゼロっ…!?
ゴンはメンチさんの掌からケータイをすり抜き、自分の耳にそれを押し当てて、電話越しの人物に叫んだ。
『待って、タンマっ!タンマだからねっ』
突然のことに呆けていたメンチさんもはっと我に返って、怒りの矛先をゴンに向ける。
「ちょっと何すんのよ!返しなさい!!」
『だってオレ、ハンター試験に受かって父さんに会わなきゃいけないんだっ!』
言葉通りケータイを奪い返されたゴンは懇願するように言った。
「そりゃ残念だったわねっ」
そんなゴンから顔を背けたまま突っぱねるように言うメンチさん。
「でも、試験の合否を決める権限は試験官のあたしにあるわけ。わかった?坊や」
『だから、メンチさんがもう1回やり直すって言ってくれればいいじゃん!』
ゴンはそんなメンチさんの正面に回りこんでお願いとも言えないような我儘を言ってのける。
「ダメったらダメ!今年の試験はもう終わりなのっ!!」
二人の言い合いを傍から見ていると、子ども同士の喧嘩みたいだな…なんて思った。
もちろん、本人達にはとてもじゃないが言えないけれど。
それでも引き下がろうとしないゴンに痺れを切らしたのか、メンチさんが額に青筋を立ててテーブルの上に足をあげる。
「アンタ達もとっと帰りな ガッッシャァ―――ンッ
メンチさんの声を遮るようにして発せられたのは、何かが破壊された派手な音だった。
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