第9章 丸焼き×sushi×失格!?
私の嫌な予感が当たってしまったのは、その数分後のことだった。
湯呑を手に取ったメンチさんが、ゆっくりとお茶を啜って溜息を吐く。
「わりっ、お腹いっぱいになっちった!」
彼女は自分の周りを囲む受験者達に目を向けて、後ろ頭を掻きながら困ったように笑った。
「「「「「はぁっ?」」」」」
「てことは、どうなるんだ?」
ざわめき始めた受験者達の大半が、そう思っているだろう。
しかし、メンチさんは自分達の腹が満たされ次第、試験終了だと言っていた。
とすれば誰かが呟いたその言葉に対する答えは既に出ている。
私の手の中にあるニギリズシも作るだけ無駄だったということだ。
「だーかーらー!最初に決めた通り、合格者はなしってことで!まった来ってねぇ~ん」
全員が不合格だとふざけた調子で言うメンチさんに、たくさんの殺気が向けられるのは当然のことだった。
しかしそれを理解していなかっただろうメンチさんは、困惑した表情で固まる。
「そんなのありかよ…」 「冗談じゃねぇぜ…」
「こんなの納得出来るわけねぇ!」
受験者達が口々に不満を漏らす中、私は何を言うでもなく、その場にただ立ち尽くしていた。
表情を戻したメンチさんは、受験者達の声を気にするでもなくどこかに電話をかけているようだった。
周りの声がうるさくて電話の内容までは聞き取れないけれど、きっとハンター協会に結果の報告でもしているのだろう。
『バカくせぇー』
私の横に立っているキルアが、頭上で腕を組みながら面倒臭そうに呟いた。
『そんなぁー!これで試験終わっちゃうなんて…』
その隣で困り果てたように嘆くゴンは、捻くれているキルアとは大違いだ。
これが普通の子供の反応だろう。
「だから構わないって!そのまま委員会に報告すればいいのよ!」
今まで聞こえてこなかったメンチさんの声がはっきりと聞こえ、やはり相手はハンター協会だったのかと一人納得する。
「イヤよ!!」
「メンチは食べることとなると見境がなくなるからなぁ~」
メンチさんの大声を傍で聞いていたブハラさんが呆れ果てたように言う。
「ブハラ、アンタは黙ってて!審査を任されてんのはあたしなんだからね!文句あんの!?」
ブハラさんを怒鳴りつけ、続けて電話越しの誰かにも罵るメンチさんは、本当に器用だと思う。
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