第2章 雨×オーラ×強い光
俺の目の前で泣きそうな顔をしながら唇を噛み締めているのは、数時間前に拾った女の子。
この子を自分の家に連れてきたのは、別に俺に危ない趣味がある訳でも、助けたいと思った訳でもない。
ただその身に纏っている“オーラ”に興味があったからだ。
女の子が自分から口を開くのを待ち、俺はごちゃごちゃしたリュックの中から水の入ったボトルと小鍋を取り出す。
水を小鍋に移し終えた俺はまたリュックに手を突っ込んで、缶珈琲とミルクティーの缶をそれぞれ1本ずつ取り出し、それを水の入った小鍋に入れて目の前で熱を放っている火にかけた。
「……まぁ、別に話さなくてもいいけどな…」
この数分の間に口を開かなかったと言うことは、余程のことがあったのだろう。
現に俺が話さなくてもいいと言った瞬間、この子は安心した表情を見せた。
「とりあえず、名前は教えてくれるか?」
出来るだけ恐がらせない様に心掛けながら言うと、俺の貸した外套を差し出しながら恐る恐る口を開いた。
『……ナナ、…です』
「ナナ、だな。あぁ、それはまだ持ってていいぜ、寒ぃだろ?」
俺が言うと、ナナは小さく頭を下げてから自分の肩に外套を引っ掛けた。
その日常的な動作をしている今でさえ、ナナはものすごい量のオーラを纏っている。
日常生活でのオーラの浪費は疲労に繋がるし、抑えておくのが常識だ。
となると、ナナは自分が纏が出来ていることをわかっていない可能性が高い。
「お前、今まで何か武術やってたか…?」
ナナは突然の俺の問いに一瞬首を傾げたが、それ程疑問に思わなかったのか小さく頷いた。
『おとうさんが護身用に、って…。それで、体術と剣術を少し…』
徐々に警戒心が解けてきたのか、さっきよりも少しだけ大きくなったその声を聞き逃さない様に耳を澄ませる。
「へぇ~……、じゃあやっぱ瞑想とか座禅とかってしてたのか?」
『はい、体を動かす前にはいつも…』
俺はその言葉で確信した。
ナナは幼い頃からゆっくり精孔を開いたことで無意識のうちに纏が出来てはいるが、念の存在自体は知らないのだと。
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