第9章 丸焼き×sushi×失格!?
「アンタ……念、使えるわね?」
嘘は許さないとでも言うように、真剣な表情で言うメンチさんに正直に頷く。
すると、彼女は深く溜息を吐いて見せた。
「やっぱりね……そこでお願いなんだけど、試験の間は念を使わないで欲しいのよね」
口調は頼み事のそれだけれど、彼女の瞳は是としか言わせないもののように思える。
『ヒソカにも、同じことを言われました。なにか理由があるんですか?』
単なる純粋な疑問を解消するために聞いただけだった。
念を使えない人との公平性を期すため、とか考えられることはいくらでもある。
「悪いけど、今は言えないのよ……」
苦笑いで言うメンチさんに文句を言うわけにもいかず、どこかすっきりとしないまま私は小さく頷く。
悪いわね、ともう一度謝られれば、こちらも いえ と苦笑で返すしかなかった。
「まぁ合格すればその理由もわかるから、頑張ってちょうだい!」
「それと、念について他の受験者に教えることもしないでもらえると助かるわ」
『わかりました…』
彼女の言葉から、たぶん何かしらの事情があるのだろうと言うことがわかる。
これ以上何か言ってもメンチさんを困らせるだけだし、ハンター試験に合格すればこのもやもやも解消されるはずだと気合を入れ直した。
「……さて、料理の審査もしないといけないし、中に入りましょう」
その言葉に頷いて中に入り、さっきまで自分が使っていた調理台の前に戻ると、ゴンとキルアの姿がなかった。
会場中に視線を巡らせると、ソファの前に出来た長蛇の列の中に二人が居るのが見えた。
丁度ゴンが先頭に来たところだったらしく、メンチさんの怒鳴り声が聞こえて来た。
ゴンの料理がレオリオさんのものと同レベルだと言うメンチさんの言葉で、床に転がされたレオリオspecialを思い出して少し吹き出す。
いけない、人の料理を笑っている余裕はないんだった。
「はいはい、じゃんじゃん持ってくるぅー!」
その言葉に若干の焦りを感じて、わからないながらニギリズシの形を想像してみる。
握り飯の三角形に合わせて魚の切り身を切るのだろうか。
掌を濡らしてまだ暖かい白ご飯を手に取り、山型に柔く握ってみる。
そして、おろした魚の尻尾あたりを三角になるように切り出して上に乗せてみたが、これじゃない感に溢れている。
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