第9章 丸焼き×sushi×失格!?
受験者達の後を追って川に辿り着いた私達は、各々魚を捕まえて調理場に戻って来ていた。
ゴンは持っていた釣竿で、キルアくんは素手で魚を捕っていた。
私も念で水を凍らせられれば早かったんだけど、ヒソカの言葉を思い出したからゴンの釣竿を借りた。
とりあえず捕った魚をまな板の上に置いてみたはいいけれど、お世辞にも美味しそうとは言えない見た目をしている。
一瞬目が合ってしまった生きたままのそれに手を伸ばし、少しだけ凍らせてから恐る恐る包丁を入れる。
さすがに生きたまま捌けないし、魚を絞めたことなんてないからやり方もわからない。
『自信アリ!!飯に新鮮な魚肉を加え、握る料理と言ったらこれしかねぇ!……よし!』
手元の魚を三枚におろし終えたところで、レオリオさんの声が聞こえてきた。
離れた場所に居るはずの私にも聞えてくるということは、近くに居る人には丸聞えだろう。
メンチさんの座っているソファの方に目を向けると、ソファの前のテーブルに料理を置くレオリオさんの姿も見えた。
『出来たぜ、俺が完成第一号だ。名付けて……“レオリオ special”!!さぁ食ってくれ!』
自信満々に叫ばれたそれは、あまりにもセンスの無さ過ぎるもので思わず吹き出す。
口元を抑えて笑ってしまいそうになるのを我慢していると、そのレオリオspecialがどんなものなのか気になって来た。
結局自分の中の好奇心に負けた私は、レオリオspecialを一目見ようと二人の元へ向かう。
「どれどれ……
ちょうどメンチさんが皿の上の蓋に手をかけた時、私はレオリオさんの背後から皿の中を覗き込んだ。
『……』
そこにあったのは、ご飯の中でぴちぴちと苦しそうに蠢く魚の姿だった。
レオリオさんは得意気に踏ん反り返っているが、メンチさんは顔色一つ変えずレオリオspecialを見つめるだけ。
「っっ、食えるかぁ―――っ!!」
そして彼女は、数秒のち鬼のような形相で皿をひっくり返した。
『てめっ!何も放るこたーねぇだろぉがっ!!』
『レオリオさん、……たぶん私でもああすると思います』
自分のすぐ後ろに私が居ることに気付いていなかったのだろう。
レオリオさんは驚きの表情を浮かべてこちらに顔を向けた。
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