第9章 丸焼き×sushi×失格!?
「あたしはブハラと違って甘くないわ、審査も厳しくいくわよぉーっ!」
どこか楽しそうなメンチさんの言葉に、その場の受験者達が息を吞んだのがわかる。
けれど、これくらいで怖気づいてなんていられない。
「二次試験後半、あたしのメニューは――――――…”スシ”よ」
少しの間を置いて、不敵に微笑んだ彼女の口から告げられたのは聞いたこともない名前の料理だった。
どこの国の料理なのかもわからなければ、材料や味付けも想像できない。
「「「「えっ…/すし?」」」」
他の人達もみんなスシがなんなのかわかっていないようだ。
ゴンとキルアくんも、あの博識なクラピカさんですら頭を抱えている。
『スシ…って、どんな料理なのかな?』
『さぁな、…ナナはどんな料理か知ってるか?』
純粋にどんな料理か気になっているゴンとは違って、キルアくんは「どうせお前も知らないんだろ?」と言いたげな表情でこちらを見てくるから腹が立つ。
けれど本当のことだし、ここで怒っても大人気ないので深く息を吸い心を落ち着かせてから口を開いた。
『知らない。というか、知らないのにどうやって作れって言うの?』
少し語気が強くなってしまったような気がしたけれど、事実なのだから仕方がない。
そのせいかキルアくんが肩をビクつかせていて、少し面白かった。
『確かにそうだな…』
苦笑しながらそう返してくれるクラピカさんは、キルアくんとは大違いだなぁなんて思う。
たぶん、私の言ったことはこの場に居る全員が思っていることだろう。
「ふふーん…大分困ってるわねぇ~」
この時ばかりは、少しだけメンチさんに殺意が沸いた。
「ま、知らないのも無理ないわ。小さな島の民族料理だからねー♪」
私達が困ってるのを見て満足そうにしているメンチさんが得意げに言う。
「ヒントをあげるわ!この中を見てごらんなさぁーい」
歩みを進める彼女の後を追って、私達も建物の中へと入る。
「ここで料理を作るのよ!」
メンチさんの指差す先には、規則正しく並べられた調理台があった。
「最低限必要な道具と調味料は揃えてあるし、
スシに不可欠なご飯はこちらで用意してあげたわ」
その上にはまな板や包丁などの調理道具、調味料。
そして木製のたらいのようなものに入ったご飯としゃもじが置かれていた。
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