第9章 丸焼き×sushi×失格!?
次はいよいよメンチさんから課題が出されるのだから。
「ナナ!」
私を呼ぶ声を辿って行くと、こちらに走り寄って来るゴンとキルアくんの姿があった。
『あの人すごいよねっ!』
そう言ってゴンが指差すのは、ぱんぱんに膨れ上がったお腹を満足そうに撫で付けるブハラさんだ。
『確かにすごいけど……』
あれだけの量を食べれるお腹があれば、きっと好きなものを好きなだけ食べることが出来るのだろう。
けれど、体型は否応なくああなってしまうことが目に見えている。
『ああはなりたくないよな』
私が心の中で思っていたことをそのままキルアくんが喋るから、びっくりして目線が自然とそちらに行ってしまう。
するとタイミング良く目が合って、キルアくんは悪戯が成功した子供のように笑う。
ただそれだけのことだ。
(それなのになんで、……こんなに心臓が落ち着かないの?)
『妙だ…、明らかにアイツの体積より食べた量の方が多い…!!』
けれど、その小さな疑問は、真剣に頭を抱えているクラピカさんの呟きでどこかに行ってしまった。
『いや、そんなにマジで悩まれても…』
かなりどうでもいいことを真剣に悩んでいるクラピカさんに、すかさずツッコミを入れるレオリオさんは流石だと思う。
「あんたねぇ、結局食べた豚ぜーんぶおいしかったって言うの?それじゃ審査になんないじゃないっ!!」
ブハラさんの審査が気に入らないのか、声を荒げるメンチさん。
確かにさっきの豚の丸焼きの中には「まる焦げ」と呼べるものもあった。
けれど、ブハラさんはそんな言葉など聞こえていないかのように応える。
「まーいいじゃん。それなりに人数は絞れたし、細かい味を審査するテストじゃないしさぁ〜」
確かに、豚を丸ごと焼くだけの料理に味付けは関係しない。
個々の料理で変わってくるのは、精々火入れと豚を焼くのに使った薪の種類くらいのものだ。
「甘いわねぇあんた…。美食ハンターたる者、自分の味覚には正直に生きなきゃだめよ!」
メンチさんの味覚で正直に審査されたら誰も受からない気がするのは、私の単なる気のせいではない……と思う。
「ま、仕方ないわね…」
ボオォォォォォンッーーー
「豚の丸焼き料理審査、71名通過ぁ―っ!」
もう一度大きく鳴らされたドラとメンチさんの宣言に歓声が沸いた。
*