第9章 丸焼き×sushi×失格!?
それどころか、見たこともないような料理を課題にされたら何も出来ずに終わってしまうだろう。
『オレあるよっ』
得意気に発せられたその言葉は、いつの間にか私の隣に立っていたゴンのものだった。
それを聞いたレオリオさんは目を見開き、感心したように聞き返す。
『…見かけによらねぇな。で、何が作れるんだ?』
『う~ん、いろいろあるけど1番得意なのはーーー…
自信満々の笑みで勿体ぶるようには吐き出されたそれは、
『卵かけご飯!!』
料理と呼んでいいのかすら怪しい、割って掻き混ぜて醤油を垂らせば終わりのお手軽料理だった。
『た、卵かけ……ご飯』
無意識で呆れたように復唱してしまっていた私は、ハッと自分の口を抑え付けた。
『ま、まぁそれも料理と言えなくはないが…』
クラピカさんが、若干呆けた顔で私が考えていたのと同じようなことを呟いてくれて少し安心する。
『ゴン、……それって誰が作っても同じなんじゃ』
そして思っていたことを素直に口にした私に、ゴンが素早く答えた。
『そんなことないよっ!だって俺ミトさんにも褒められたことあるもん』
『…そ、そうなんだ!じゃぁまた今度私にも食べさせてね?』
卵かけご飯って、どこを褒めるんだろう。
とびきりの笑顔で頷いてくれるゴンを見ながらそんなことを思ったけれど、口には出さなかった。
「そんじゃぁ俺のメニューは……
ちょうどその時ブハラさんの声が聞こえ、私達は話すのを止めて続きの言葉を待った。
「豚の丸焼きっ!!」
目をキラキラさせて涎を垂らしながら言うブハラさん。
ゴンの卵かけご飯もそうだけれど、果たしてそれは料理と呼んでいいのだろうか。
「俺の大好物❤……この森に居る世界で最も凶暴な豚“グレイトスタンプ”」
うっとりとした表情で指を咥えているブハラさんの脳内は、もう豚の丸焼きのことでいっぱいなんだろうな……。
「「「グレイトスタンプっ!?」」」
受験者達が繰り返すその名前は、真っ黒で鼻の大きな豚を指すものだ。
前に一度、本で読んだことがある。
体のどこかに弱点があったはずなのだが、全くと言っていい程思い出せなかった。
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