第8章 他人×奇術師×実は犬?
私達は、自分達に襲いかかって来る変な生き物を払い除けながら、森の中を走り抜けていた。
その数が減って来た頃を見計らって、先に口を開いたのはヒソカだった。
「君、念能力者だろ?」
わかりきったことを聞いてくるヒソカに少し苛立ったけれど、私はその質問にきちんと応えを返す。
『そうですけど……それはあなたもですよね?』
人一人を抱えているなんて感じさせない動きで、茂みから現れた魔獣を切り付けるヒソカ。
「そう、僕も念が使える★そこで1つ言っておきたいことがあるんだ♠」
そしてトランプに付いた血を払ったヒソカは、私を横目で見ながら言った。
「試験の間は念を使わないこと♥」
いきなり言われたそれはあまりに理不尽なものだ。
さっきも、そして今も念を使っているヒソカに言われると尚更そう感じる。
『なんでですか?』
苛立ちが声に表れてしまっているかもしれないけれど、この際気にする必要はないだろう。
「……そのうちわかるさ♦」
意味あり気な笑みを浮かべたヒソカは、それだけ言うと視線を前に戻す。
何か意味があるんだろうけれど、今の私にはそれがどんな意味を持つのかわからなかった。
『ぁ…』
森を抜けた私達の目の前に現れたのは、サトツさんと受験者達。
そして一軒の建物だった。
「じゃぁ、またね♥」
手頃な木に凭れかけるようにレオリオさんの身体を置いたヒソカは、1人でどこかに行ってしまう。
ヒソカと一緒にこの場に現れた私は、周りの人達から遠巻きに見つめられていた。
そのことはあまり気にしないようにしようと、ひとつ溜息を零してレオリオさんの横に腰を下ろす。
すると、どうしてもレオリオさんの顔に出来た痛々しい傷が目に入るのだ。
治してあげたいのは山々だけれど、ヒソカに釘を刺されているし、何よりどうやって治したのかをゴン達に説明しなければならなくなる。
そんなことを考えていた矢先、乾いた音がひとつ森の中に響いた。
「皆様お疲れ様でした。ここ“ビスカ森林公園”が二次試験の会場となります」
サトツさんのその言葉を聞いた私は、ゴン達がさっきの合図に間に合ったかどうかが気になり初めていた。
辺りに視線を巡らせて見るけれど2人の姿は見つからない。
最悪の結果を考えかけたその時、聞き覚えのある声が2つ耳に届いた。
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