第8章 他人×奇術師×実は犬?
その時、ヒソカの背後に誰かの姿を見つけた。
「おやおや、戻って来ちゃったのかい?」
その気配に気付いたのか、後ろに振り向いてもいないヒソカが呟く。
その後ろで2本の木刀のようなものを素早く構えるクラピカさん。
「すばらしいねぇ♠やはり持つべきものは仲間ということ訳か♦」
にこにことした顔で言われたそれは、とてもヒソカの言葉とは思えない。
そんなことを考えていると、どこからか電子音が鳴り響いた。
それに気付いたヒソカが自分のポケットに手を突っ込み、取り出したケータイを耳に押し当てる。
安くはないはずのそれを持っているなんて、ヒソカと言う人物が益々わからなくなる。
「うん、……そう★すぐ行く♥」
簡潔に一言、二言で通話を終わらせたヒソカは、ケータイをしまってレオリオさんに近づいて行く。
『レオリオっ!』
切羽詰まったゴンの声を無視してレオリオさんを自分の肩に担ぐヒソカ。
「大丈夫、殺しちゃいないよ♦彼も合格だから…♠」
ヒソカはゴンにも“合格”だと告げていたけれど、果たしてそれが何を意味するのか。
その本当の意味を知っているのは、こちらに一歩一歩近付いて来るヒソカだけだ。
『っ、どうゆうことっ!?』
「ん…?」
ゴンの問いの意味を測りかねているのか、ヒソカは私の目の前で立ち止まると首を傾げた。
『レオリオを返してっ!!』
物凄い剣幕で言うゴンに、ヒソカは少しも動じることなく笑って言った。
「返して欲しかったら、ついておいで♦」
「君は僕と来るんだよ♥」
『えっ……私??』
思わず口にした言葉が音になっていたことで、いつの間にか念が解除されていることに気付く。
私の言葉に応えるように頷くヒソカに、私はひとつ溜息を吐いて足を動かし始めた。
『『ナナ!』』
声のした方に顔を向けると、ゴンとクラピカさんが心配そうにこちらを見ていた。
今の所、ヒソカからの私に対する殺気は感じられない。
それを信用するのもどうかと思うけれど、ここで従わなければ2人がどうなるかわからない。
それに、ヒソカがレオリオさんを連れて行くなら傍に誰か居た方がいい。
『私は大丈夫だよ…、レオリオさんのこと放っておけないしね!』
私は笑顔でそれだけを伝え、霧の中に消えて行くヒソカの後を追った。
*