• テキストサイズ

復讐者と殺人鬼【HUNTER×HUNTER】

第2章 雨×オーラ×強い光







「ナナ……」


「ナナ………」


いつも耳にしていた優しい声に導かれて、私は真っ暗な空間を1人歩いていた。


何も見えないはずなのに、この先に必ず両親がいるとわかった。


突然目の前に現れたのは、見慣れた扉。声はこの中から聞こえて来る。


確信もないのにそう思った私は目の前の扉を勢いよく開け放った。


『おとうさ…、っ!!?』







その先に居たのは、あの時のままリビングに転がる血塗れの両親。


『ゃ、なんでっ……、また!』


私は自然と後ずさりし、部屋から出ようと扉の方へ振り返る。


「ナナはまた、……1人で逃げ出すのね?」


『ッ、……ひ、ぁ…』


目の前にふらりと現れた母、……だったもの。


イルミと同じ瞳で私を見つめる血塗れの女が、私の両肩を掴む。


『ちがっ、あたし、ッ!!?……いたっ』


足に何かが突き刺さるような痛みを感じ、自分の足元に目を向ける。


「何も、……違わないだろう?」


そこには、私の足に爪を立ててこちらを見上げる父が居た。


ここまで床を這って来たのか、床に赤黒い滴で線が描かれている。


「お前は……、私達を置いて逃げたんだよおぉおぉぉぉ」


狂ったように叫び、口から赤黒い血を撒き散らす男は、もはや父ではなかった。


『ぁ、あぁっ…』


父が怖い訳でも、寒い訳でもないのに音を立てて震え出す私の身体。


あの時出なかった涙が、今は止まらない。


『いやあぁぁぁぁっ!!!』


そう叫んだ瞬間、目の前の光景がすべて黒く塗り潰された。


どこを見渡しても広がっているのは闇だけで、床が存在しているのかどうかもわからない。


いきなりのことに驚いて止まっていた涙が、また溢れ出した。


(もうこんなのやだッ!)


(今までのこと全てが夢で、……またみんなで笑い合いたい)


強くそう願っていたけれど、それは叶わないのだと言うことも何となくわかっていた。







「……おいっ!」


私以外誰の姿も見えない空間に、微かな声が響いたような気がした。




/ 116ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp