第8章 他人×奇術師×実は犬?
瞬く間に何人もの受験者達が地に伏していく。
その光景を見た者達がさっきまでの威勢を失くして逃げ惑う。
「う、うわぁ――!!」「たっ助けてくれーーー」
「あぁあぁはっはっはっは!!!!」
狂ったように笑い続ける奴は、躊躇うことなくその者達の息を止めていった。
やがてヒソカは、私とレオリオ、そして特徴的な帽子を被った青年以外の人間を全て殺し終え足を止めた。
「全員不合格★残るは君達3人だけだね♠」
『てめぇっ……』
レオリオの言葉に反応したヒソカがゆっくり間合いを詰めるのがわかり、無意識のうちに後退する。
「君から、……逝くかい?」
レオリオに向けられた言葉だとわかってはいたが、ひやりとした何かが首筋を伝った。
「俺が合図したら、バラバラに逃げろ」
不意に耳を突いたのは、聞き覚えのない冷静な声だった。
『何っ?』
不満そうな声を上げるレオリオに、私の隣に立つ青年が続ける。
「奴は強い。どんな殺し屋でも人1人の命を奪う時には一瞬の躊躇いがあるもんだ」
「だが、アイツにはそれがない…」
青年の言うことはどう考えても正論だった。
『確かに、今の我々が3人束になって掛かっても勝ち目はないだろう…』
だから私はその意見に賛成していることを示すように自分の考えを述べたのだが、レオリオは違ったらしい。
『やってみもしないでわかるのかよっ!』
半ば怒鳴りつけるように言うレオリオ。
「アンタ達も強い目的があってハンターを目指してるんだろう?悔しいかもしれないが今は退くんだ!」
それにも動じない青年の強い物言いに、レオリオは渋々と言った感じではあるが納得したようだった。
程なくして青年の合図がかかり、私達は全く違う方向へと散る。
「なるほど、いい判断だ♦ご褒美に10秒待ってあげるよ✭」
(ヒソカの気が変わらぬうちに、出来るだけ遠くへ逃げなければ……)
「―――9、10♠さて、誰と遊ぼうかな………おや♥」
思ったよりも遠くへ来れていないのか、ヒソカの声が未だに聞こえてくる。
『やっぱ駄目だ』
その声を聞いた私は思わず足を止めていた。
「諦めたのかい?」
『なぁにその逆よ。こちとらやられっ放しで我慢出来るほど……人間できちゃいねんだよ!!』
ヒソカの声に混じって聞こえて来たのは、間違いなくレオリオの声だった。
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