第8章 他人×奇術師×実は犬?
悪意を持って飛んでくる幾枚ものカードを薙ぎ払い、それが飛んで来た先を見据える。
背後で攻撃を防げなかった者達が地面に倒れていくのがわかった。
『いってぇーーっ!』
レオリオも攻撃を防げなかったようだが、今の私に他人を気にしている余裕などなかった。
「クックック……♥」
気味の悪い笑い声と共に霧の中から現れたのは、あの男だった。
『てめぇ、何しやがる!』
「試験官ごっこ♦二次試験までは大人しくしていようと思ったけど余りに退屈なんでね♠」
レオリオの言葉に応えるようにそんなことを言ってのけるヒソカ。
やはりどこか狂気地味た雰囲気を持つやつに、刀を持つ手が少し震えた気がした。
「審査委員会の仕事を手伝ってあげようかな…って思って☆」
ヒソカは器用にトランプを操り、そのうちの1枚を手に取って薄く笑う。
「僕が判定してあげるよ……君たちがハンターに相応しいかどうか♦」
まだ地面に倒れていない者達がその言葉を鼻で笑ったのがわかった。
「判定??この間抜けが!」
それを皮切りに、数人の受験者がヒソカの言葉を嘲笑うかのように喋り出す。
「この霧だぜ?一度見失ったら最後、先頭を行ってる試験官を見つけ出すなんて不可能だ!!」
「つまりお前も俺達と同じ不合格者なん…
何かを切り裂く音が聞こえたかと思うと、べらべらと喋っていた受験者のうちの1人が地面に伏した。
「失礼だなぁ…君と一緒にするなよ♥」
ヒソカは血の付いたトランプを丁寧に舐め上げて不気味に笑った。
「冥土の土産に教えてあげる♠奇術師に……不可能はないの♦」
「笑わせるなっ!」
ヒソカの周りを取り囲むようにして、各々の武器を構える受験者達。
私は、どうしてもそこに加わる気にはなれなかった。
どう足掻いても奴には勝てないと悟ってしまったのだ。
たぶん、私の隣に居るレオリオも同じ様に感じていたのだろう。
「貴様にハンターになる資格はねぇっ!」
頭に血が登った者達を止めるべきだろうか。
無駄死にはよせ、と。
「二度と試験が受けられない様にしてやるぜっ!!」
けれど、そう思った時にはもう遅かった。
「そうだなぁ、君達まとめてこれ1枚で……十分かな♥」
スペードのエースを手に取って不気味に笑うヒソカと、やつに襲い掛かっていく受験者達を私はただ見ていた。
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