第7章 ドキドキ×ハラハラ!×なりたい理由
クラピカさんが付いているから大丈夫だろうと思っていたけれど、レオリオさんもだったとは。
「じゃあ、そこに居るのは一体……」
『おいおっさん、証拠はあるんだろうなぁ!?あっちが偽物だって言う証拠がよ!』
誰かの不安げな呟きを掻き消すように、レオリオさんがそう叫んだ。
レオリオさんも騙され掛けていると思っていた私は、レオリオさんに心の中で小さく謝っておいた。
「こいつを見ろ!!」
直後、男は手に持っていた物を地面へと放り投げた。
そこから転がり出て来たものが、さらに受験者達を混乱させたのは言うまでもない。
「なっ!?なんだありゃ……魔獣、か?」
何故ならそれは、顔がサトツさんにそっくりな痩せ細った猿だったのだから。
「おっ、おいあの顔、……試験官そっくりじゃねぇか?」
私の思っていたことをそのまま誰かが呟くと、男はそれを待っていたかのように喋りだした。
「そう……、こいつはヌメーレ湿原に生息する人面猿。人に化けて言葉巧みに人間を騙し罠に嵌める…」
説明を聞いても何の反応も示さないサトツさんをいいことに、男はべらべらとしゃべり続ける。
「そいつはその人面猿の仲間だ!お前達受験者を皆殺しにして食うつもりだぞ!!」
その言葉に何人の受験者が騙されてしまったかはわからない。
『通りで……、あの地下道での走り、人間離れしてると思ったんだ』
レオリオさんが男の言葉に納得したように呟いてサトツさんに詰め寄り、それに倣うように受験者達が周りを取り囲んでいたから、かなりの数の受験者が男の話を信じ切っていそうだ。
止めに入るべきかとも思ったけれど、試験官であるサトツさんはその場から一歩も動かずに状況を見守っている。
だから私も男の言葉に騙されてサトツさんに襲いかかろうとしている人達を止めるつもりはなかった。
たぶん、受験者達がサトツさんに何かしようとしても返り討ちに合うだけだろうから。
『これってやっぱり、ハンター試験なのかな?』
受験者達のざわめきの中に投げ込まれたゴンの言葉は、どの声よりも大きく聞こえた気がした。
騒ぎの中心になっていたレオリオさんもゴンの言葉で少し冷静になったのか、ゴンと何かを話していたけれど私にはあまり聞き取れなかった。
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